登壇者


グラント・B・ローマー
ジョージ・イーストマン・ハウス写真・フィルム国際博物館 元シニア修復師

1946年ニューヨーク市生まれ。プラット・インスティテュートで美術学士号、ロチェスター工科大学にて写真学および博物館学修士号を取得。1974年から2015年までジョージイーストマンハウスで写真保存担当、過去10年間、写真保存のアンドリュー・W・メロン上級レジデンシー・プログラムのディレクターを歴任。退職後「イメージへの飽くなき衝動」「視覚体験の描写におけるテクノロジーの応用」とをもつ革新的研究者やアーティストたちを支援するため民間団体であるAcademy of Archaic Imagingを設立した。


高橋則英
日本大学芸術学部特任教授

1978年日本大学芸術学部写真学科卒業、1980年日本大学芸術研究所修了。 2002年日本大学芸術学部教授。2021年日本大学芸術学部特任教授。 2018年日本写真芸術学会会長。専門は写真史、画像保存。 共著として『写真の保存・展示・修復』(日本写真学会画像保存研究会編, 武蔵野クリエイト, 1996年)、編著として『レンズが撮らえた 日本人カメラマンの見た幕末明治』(山川出版社, 2015年)、『文化財としてのガラス乾板-写真が紡ぎなおす歴史像』(勉誠出版, 2017年)、翻訳監修として『写真技法と保存の知識 デジタル以前の写真―その誕生からカラーフィルムまで』(青幻舎, 2017年)などがある。


佐藤守弘
同志社大学教授

1966年京都生。コロンビア大学大学院修士課程を経て、同志社大学大学院で博士(芸術学)取得。専門は写真と視覚文化の理論/歴史研究、とくに近現代日本におけるトポグラフィ(場所表象)の研究。およびポピュラー/ヴァナキュラー文化の研究。単著に『トポグラフィの日本近代――江戸泥絵・横浜写真・芸術写真』(青弓社、2011年)、共編著に『学校で地域を紡ぐ――『北白川こども風土記』から』(小さ子社、2020年)、共著に『開封・戦後日本の印刷広告 『プレスアルト』同梱広告傑作選〈1949-1977〉』(創元社、2020年)など。翻訳にジェフリー・バッチェン『写真のアルケオロジー』(共訳、青弓社、2010年)など。2012年、第62回芸術選奨文部科学大臣新人賞(評論等部門)受賞。


photo: Alexander Dzhus

マイク・ロビンソン 博士
ダゲレオタイピスト

1961 年カナダ生まれ、ダゲレオタイピスト。2017 年にロビンソンが発表した『The Techniques and Ma- terial Aesthetics of the Daguerreotype(ダゲレオタイプ技法と素材の美学的特質)』は、長年にわたって氏が確立したダゲレオタイプ技法に関する膨大な知見と歴史的資料の考察に基づいて、同技法の美的要素を科学 的に考察した革新的な論文として注目を集める。ロビンソンはダゲレオタイプ製作のための各装置を独自に改良し、アパチャー財団、ジョージ・イーストマン・ハウス、フォックス・タルボット美術館をはじめ各国でワークショップ、レクチャーなどを行い技法の普及に貢献してきた。『Young America; The Daguerreotypes of Southworth and Hawes(ヤング・アメリカ: サウスワーズ・アンド・ホーズのダゲレオタイプ)』 (2005、スタイデル)、『Coming into Focus(カミング・イントゥ・フォーカス)』(2000、ウロニクル・ブ ックス)ほか共著多数。


安藤千穂子
京都工芸繊維大学 博士後期課程

京都工芸繊維大学工芸科学研究科博士後期課程三年目に在学中。2019年、同前期課程修了。前期課程の研究課題は、薩摩藩主島津斉彬による初期写真術の受容について。後期課程では、19世紀半ばの日本におけるダゲレオタイプとカロタイプの受容と展開を研究している。


photo: Jeremy Stillings, 2019

ジョン・ジェイコブ
スミソニアン・アメリカ美術館マクイーヴォイ家写真キュレーター

ジョン・ジェイコブは、スミソニアン・アメリカ美術館マクイーヴォイ家写真キュレーター。「(Harlem Heroes: Photographs by Carl Van Vechten)ハーレムの英雄たち:カール・ヴァン・ヴェクテンの写真」(2016年)、「Diane Arbus: A box of ten photographs(ダイアン・アーバス:10枚の写真の箱)」(2018年)、「Trevor Paglen: Sites Unseen(トレヴァー・パグレン:見えない場所)」(2018年)、「Welcome Home: A Portrait of East Baltimore, 1975-1980(ウェルカムホーム:東ボルチモアのポートレイト、1975-1980)」(2021)など、多数の展覧会を手がける。


アン・ハヴィンガ
ボストン美術館写真部門長

アン・ハヴィンガは、ボストン美術館のエストレリータ・アンド・ユーサフ・カーシュの写真部門長。2001年から美術館の写真部門を率い、1989年から美術館のスタッフを務める。ボストン美術館に勤務する以前は、スミス大学美術館およびフィラデルフィア美術館にてキュレーターを歴任。ミドルベリー大学にて文学士号(1980年)ウィリアムズ大学にて修士号(1983年)をそれぞれ取得。 ボストン美術館在任中、ハヴィンガはメディアの黎明から現代に至る多種多様な展示会を企画してきた。主な展覧会に「Postwar Visions: European Photography 1945-60 (戦後のビジョン:ヨーロッパの写真1945-60)」(2019)、「Alfred Stieglitz and Modern America(アルフレッド・スティーグリッツと現代アメリカ)」(2017)、「Truth and Beauty: Pictorialist Photography(真実と美:ピクトリアリスト写真)」(2014)、「Photo Eye: Avant-Garde Photography in Europe(フォト・アイ:ヨーロッパのアバンギャルド写真)」(2014)、「Silver, Salt, and Sunlight: Early Photography in Britain and France(銀、塩、そして陽光:イギリスとフランスにおける黎明期写真)」(2012)。また、アン・ニシムラ・モース(ボストン美術館でウィリアム・アンド・ヘレン・パウンズ日本美術シニアキュレーター)とともに「In the Wake:Japanese Photographers Respond to 3/11(震災以後 : 日本の写真家がとらえた3.11)」(2015)を共同企画した。上記プロジェクトほかを広範に網羅するエッセイや多数の展示カタログなど、執筆多数。 ハヴィンガは〈10×10 Photobooks〉による巡回展示にて写真集による3日間のポップアップ展示「How We See:Photobooks by Women(私たちはこう見る:女性たちの写真集)」(2019)を企画。同展で紹介された写真集は国際的な多様性を持ち日本人女性写真家も含まれた。また同展に関連して、ハヴィンガはマサチューセッツ芸術大学と協力して、大学院生、アーティスト、写真集コレクターによる数日間の複数の講演を行った。 ハヴィンガは19世紀作品の重点的所蔵や日本写真の収集計画の策定など、ボストン美術館の写真コレクションの戦略的強化に取り組んでいる。ハヴィンガ監督の下、ボストン美術館はレーン・コレクション(主にアメリカのモダニスト写真、約6000点の作品からなる)の寄贈を長年にわたって受け入れてきた。世紀の変わり目に活動したボストンの写真家F. ホランド・デイF. による重要作品「Seven Last Words」の購入に携わったほか、20世紀半ばの記念碑的なフォトジャーナリズム作品とソーシャルドキュメンタリー写真の古典・447点の作品によるハワード・グリーンバーグ・コレクションの購入(2018年のフィリップ・アンド・エディス・ローゼンブラム・レオニアン慈善基金による寄付に多くを拠る)を担当したことは、ハヴィンガの最大の功績である。 ハヴィンガの関心領域は、特に19世紀写真、ピクトリアリズム、日本写真、ファッション写真、現代写真などがある。また版画とデッサンの専門家であることから、2016年から2020年まで、ボストン美術館の版画&デッサン部門の部門長に一時的に就任している。


アルパン・ムカジー
ビスババラティ大学准教授

19世紀の素材と技法の歴史は、アーティストとしてのアルパンを魅了してやまない。アルパンは19世紀の写真における光学/工学的プロセスに芸術的な可能性を見いだし探求を続けてきたほか、写真のドキュメンテーション、歴史、化学、デザインについて調査を行ってきた。これらの研究や実験に基づき、アルパンは現代的問題に取り組む。 アルパンの仕事に基礎にあるのは身近な環境と日常生活の個人的な解釈であり、研究やドキュメンテーションを通じて、社会に存在する差別、政治的、経済的な現状に疑問を投げかけ、批判を行ってきた。こうした作品はプロセスに重点を置くものであり、主なメディアとして19世紀の写真技法を使用する。アルパンの作品においては彼自身のアイデンティティと、化学反応、素材の特性が基本的な現象として見いだされる。国内外内の複数展示会に参加したほか、版画と写真の歴史に関する多数の講演およびワークショップを担当。コロナ禍以前には、三つの作品群がそれぞれチェンナイ写真ビエンナーレ、コルカタ国際写真祭、リスエ写真祭、中国、およびセレンディピティアーツフェスティバルに出展されている。 版画で芸術学士および芸術修士と取得。現在、サンティニケタンのビスババラティ大学で版画の准教授として教鞭を執る。


ムリナール・バホーカンディ
文筆家/映像作家/写真家

ムリナール・バホーカンディはインドのゴアを拠点に活動する作家、映画製作者、写真家。 カメラ・レンズをベースにしたビジュアル・アーティストとして、ヴィデオ・アート、アナログ・フィルムを用いた写真、古典技法によるイメージ生成プロセスの概念や、その背後にある物語を研究しながら、さまざまなフォーマットを横断しながら作品制作を行ってきた。ヴィデオ・アートにおいては、光学系に働きかけることで視覚情報を歪める試みを行う。写真家としての活動は、作家および映画製作者としてのバホーカンディの実践の延長にあるという。現在、乾板湿板プロセスを含む19世紀の写真プロセスを追求、実践している。


カミロ・サボガル・B
写真家

1974年コロンビアのボゴタD.C.生まれ、ボゴタ在住・在勤。サボガルは写真ににおける化学と暗室でのプロセスに情熱を注いでいる。1993年以降独学で、またプロフェッショナル写真家のためのラボでの暗室技師としての経験からこの分野に関する専門知識を習得。15年以上にわたりさまざまな写真プロセスの研究と実験に専念し、多数の機関における教育活動やプライベート・ワークショップを通じて、その経験を共有してきた。
2017年にはスペインのカタルーニャ州ビラサール・デ・ダルトで開催された現代アナログ写真フェスティバルRevela-Tの第5回に出展およびワークショップを担当、2016年には同フェスティバルの芸術文化交流の最初のアーティスト・イン・レジデンス・プログラムに参加した。ヴィジュアル・アートのための内外の奨学金、XIIビエンナーレ地区賞の大賞ほか受賞多数。サボガルの作品はエドゥアルド・セラーノ著「コロンビアの写真史 1950-2000」(エディトリアル・プラネータ&コロンビア国立博物館、2005)に掲載されている。

Webサイト:camilosabogal.com
Instagram:camilo_sabogal_b


青山勝
大阪芸術大学教授

大阪芸術大学教授。専門は視覚文化研究。近年の関心は初期写真研究。編訳書にW・H・F・トルボット『自然の鉛筆』(赤々舎、2016年)などがある。


アダム・フス
アーティスト

アダム・フスは1961年ロンドンで生まれ。成長期に過ごしたイギリス田園地帯で、写真を通して自然環境を記録し始める。この体験が型にはまらない写真プロセスの実験、そして最終的にはカメラを完全な放棄につながった。 フスの作品は黎明期の写真技法、特にダゲレオタイプとフォトグラムによるカメラを使用しない写真技法を現代的に再解釈した点で特徴づけられる。フスは、写真技法が機能するためにはそれを個々人のものとし、自然界で営まれる魅力的なプロセスを、より深い比喩へと変換する必要があると考える。 フス作品中最もよく知られた等身大の水のフォトグラムに見る刺激的なイメージからは、精神的で詩的なニュアンスが浸透している。フスが昇華させようと試みる写真の本質──すなわち感光面に作用する閃光──は、変容と知覚にまつわるテーマを強く浮かび上がらせることになる。 伝統的写真の細部や明瞭さを意図的に避け、フス作品は光と影による霊的な現前であるといえる。The New Yorker誌の展評では「片時もじっとしていられない独創的な写真家・フスは、過去20年間で最もエキサイティングで、神秘的かつ挑発的なイメージを作成した」と評じられた。 ロバータ・スミスは、ニューヨーク・タイムズ紙上でフス作品について「これらのイメージは心霊写真の古い伝統を、そして焼き尽くす火の力は言うまでもなく、ゴッホのポプラや、伝統的な中国の風景画などを私に想起させる。これらの作品のほとんどに、フス氏の強みである新しい形式の質のよさ、つまりコントロールされた偶然と、優れたコントロールによってもたらされる息を呑むような視覚的な贅沢さがある。」 と評じている。 フスは1982年以来ニューヨーク市に住み活動してきた。彼の作品は世界的に知られ、ニューヨーク近代美術館、ホイットニー美術館、ロサンゼルス・カウンティ美術館、ビクトリア・アンド・アルバート博物館ほか多数のアメリカおよび海外のコレクションに収蔵されている。


ビン・ダン
アーティスト

1977 年ベトナム生まれ、アーティスト、サン・ノゼ州立大学助教授(写真学)。ダンはベトナム移民の歴史、 とりわけベトナム戦争に取材した作品でアメリカ国内の美術シーンで注目を集め、その後クロロフィル・プリ ントやダゲレオタイプなど様々な写真技法を横断的に使用しながら、活動を継続してきた。近年のプロジェクトに、オルタナティヴ・プロセス(古典写真技法)を駆使して制作する「戦場」のランドスケープ・シリーズ、ダゲレオタイプによるアメリカ国立公園に関するシリーズなどがある。サンフランシスコ近代美術館、フィラデルフィア美術館、ジョージ・イーストマン博物館、デ・ヤング美術館ほか美術館に作品収蔵多数。


クレッグ・タフェン
アーティスト

1969年、オーストラリア生まれ。ニューサウスウェールズ州北部のトゥイード・コースト在住アーティスト、教育者。30年以上の幅広い写真教育の経歴を持ち、オーストラリアの州立学校で唯一の「19世紀の写真プロセス」を主眼におくカリキュラムを設立。ブリスベン博物館では、19世紀の写真撮影方法のコンサルタントを務める。また、多数の写真集や国内外の展示において作品を発表。ゲティ学術研究所、オーストラリア国立美術館、クイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州の州立図書館などに作品が収蔵されている。


ジェリー・スパニョーリ
アーティスト

ニューヨークを拠点に、歴史の個人的な経験と、それを客観的に記録する写真技法のあり方に関心を寄せ、写真の古典技法に取り組む先駆者として活躍を続ける。2019年にSteidl社から出版された最新作『Regard』を含めた多くの書籍や出版物に作品が掲載。また、ホイットニー美術館、ボストン美術館、ナショナル・ポートレート・ギャラリー、ネルソン・アトキンス美術館、フォッグ美術館、その他の美術館に収蔵されている。


Photo: Anton Orlov, 2015

新井卓
アーティスト、映画監督、遠野文化研究センター研究員

1978年神奈川県川崎市生まれ。写真の原点を探るうち最初期の写真術・ダゲレオタイプ(銀板写真)を知り、試行錯誤ののち同技法を習得。対象に出会ったときの感覚を、時間と空間を超えて、見るものに生々しく伝えることのできる<小さなモニュメント>として、自身のメディアとしてきた。2014年に英国ソースコード・プライズ(現 The Solas Prize)、2016年には第41回木村伊兵衛写真賞、日本写真協会賞新人賞、神奈川文化賞未来賞を続けて受賞。2018年、映像詩『オシラ鏡』で第72回サレルノ国際映画祭短編映画部門最高賞。スミソニアン博物館、ボストン美術館、サンフランシスコ近代美術館、東京国立近代美術館、東京都写真美術館、ギメ美術館ほか多数の美術館に作品収蔵。


高橋朗
PGIディレクター

早稲田大学第二文学部にて平木収氏に師事。1998年、東川町国際写真フェスティバルにボランティアスタッフとして参加。在学中より、PGIにて写真の保存・展示に関する業務に携わる。2003年から東川町国際写真フェスティバル現場制作指導として、また2005年から2010年までアシスタントディレクターとして参加。 1998年からPGIにて写真の保存・展示業務に携わる。2010年よりギャラリーディレクターとして川田喜久治・三好耕三・今道子をはじめとした展覧会の企画を担当、新しい才能の発掘にも力を入れている。